旧三菱合資会社唐津支店本館

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 唐津の海岸通り、工場や倉庫群が立ち並ぶ唐津湾の傍の一角に建つ明治後期の洋館。石炭の積出港として発展した唐津で、近くを流れる松浦川を下って運ばれてくる唐津炭田の石炭を唐津港から積み出すための石炭貿易基地として建てられた三菱合資会社の本館でした。

 1934年(昭和9年)に事務所が撤退した後、唐津海員学校校舎、唐津海上保安部庁舎などの政府機関の庁舎に転用されたのち、三菱商事から唐津市に寄贈されました。1979(昭和54)年からしばらくは唐津市の歴史民俗資料館として使用されていましたが、現在は休館中です。

 建物は左右対称で、下見板貼りの外壁。入母屋造りの大屋根にとんがり帽子のような塔屋根があり、玄関部は切妻という面白い屋根形状になっています。建物の背面、海側の部分には1階、2階にバルコニーがあるのが特徴の大規模洋館です。

 設計は唐津出身の曽禰達蔵が建築顧問だったという情報が多いようですが、INAX Report では、曽禰達蔵の作品リストにはなく、保岡勝也の設計になっています。保岡は三菱社で曽禰達蔵とともに、丸の内の赤煉瓦オフィス街の建設に携わり、曽禰の退社後は技師長を務めた建築家(後に独立して銀座に保岡建築事務所を設立)ですから、この情報は正しいと思われます。佐賀県重要文化財の木造2階建て。

旧三菱合資会社唐津支店本館
1908(明治41)年
佐賀県重要文化財
設計 : 保岡勝也(三菱丸の内建築事務所)+曽禰達蔵(顧問)
施工 : 神戸三菱建築事務所
唐津市海岸通7181  
撮影 : 2009.8.13
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 敷地の端には煉瓦造りの倉庫もありました。
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 市街地から離れ、交通の不便な位置にあるため、地元でも知らない人もいて、歴史民俗資料館としての役目を果たせなかったのでしょう。ただこれだけの貴重な建物ですから、大切に保存してもらいたい物件です。
by gipsypapa | 2010-10-27 15:23 | 建築
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