山科の栗原邸

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 兵庫県はまだ多くの建物の撮りだめがありますが、長くなったので、少し京都に行ってから、関東地方へ移動します。

 今年7月に本野精吾氏の自邸を見に行ったあとに、この建物を知り、見たいと思っていたところに、新聞で一般公開されることを知り申し込みました。あいにく朝から雨でしたが、現地に到着したころには幸い雨は止んでいました。ただもう少し太陽の光があればよかったのですが。

 この建物は本野精吾が武田五一の招聘を受けて勤務していた京都高等工芸学校(現京都工芸繊維大学)の校長で、染織家でもあった鶴巻鶴一氏の自邸として昭和4年に建てられたものです。

 先に紹介した本野精吾自邸はこじんまりして、限りなくシンプルなモダニズム建築でしたが、この建物はその5年後の築ということもあって、ウィーン分離派やアール・デコなどの影響を受けたより装飾的で、遊び心のある住宅建築となっています。DOCOMOMO Japan 選出の「中村鎮式コンクリートブロック造」2階建。

栗原邸
旧鶴巻邸 1929(昭和4)年
設計 : 本野精吾
施工 : 不明
京都市山科区御陵大岩17-2
撮影 : 2008.11.8
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 公開日の初日ということで、たくさんの見学客でした。建物は中村鎮式コンクリートブロック造ですが、この玄関ポーチとその上の張り出しサンルームは印象的な円柱形なので、普通のコンクリート造り。
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 道路から門を見た建物は、自邸に通じるモダニズムのデザイン。
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 通用口や窓に直線的な庇があるのは、F. L. ライトを思い出させます。庇を設けたのは雨が多く日差しの強い日本の気候を配慮したものだそうです。
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 裏側からの全景。異様に高い煙突が先端にかけて微妙に細くなっています。
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 他の窓はブロックで囲んだシンプルな構造ですが、左の面の窓だけは張り出して複雑な構造。このショットはF.L.ライトか遠藤新みたいです。
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 コンクリートブロック剝き出しの壁は本野清吾らしい。中村鎮式コンクリートブロック造は、現在のコンクリートブロックではなく、L字型を組み合わせることによって空間を作り、その空間に鉄筋を入れてコンクリートを流し込む方式なので、耐震強度が強いのです。中村鎮が設計した建物が関東大震災(1923)で倒壊しなかったことに本野精吾が注目し採用したとのこと。
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 2本の円柱で支えられた玄関ポーチ。この辺はモダニズムというより、かなり装飾的です。
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 1階の居間。
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 木製の戸棚が組み込まれた当時としては現代的なキッチン。
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 バスルーム。
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 書斎。インテリアの家具は当時のままです。
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 円形に張り出した2階のサンルーム。
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 2階のもう一つの部屋。寝室だったかも?
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 染織家でもあった鶴巻鶴一氏が書いた襖絵。
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 各部屋の灯具は多様です。これらも本野清吾によるもの。
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 各部屋に暖炉がありました。
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 階段を上って。
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 屋上に出ました。琵琶湖疎水が北側を流れていて、見晴らしの良い場所にあります。夏はここでビールを飲みたくなるでしょう。
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 見どころの多い、わたし好みのモダニズム建築でした。外観はさておき、内部は傷みが目立っている箇所が多く、このような古い建物の維持がいかに難しいか、というかお金がかかるか、ということを再認識しました。さらにコンクリートブロック造りの場合は、後になって壁に配管や配線用の穴をあけるのに躊躇しそうですね。
by gipsypapa | 2008-11-18 15:28 | 建築
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