この「坐漁荘」は西園寺公望が政治の第一線から退いた後、大正9年(1920)に駿河湾奥、清水港近くの興津の海岸に建てた別邸である。旧東海道に沿って建てられた低い塀の奥に、玄関、台所、二階建座敷等の屋根が幾重にも重なる。木造桟瓦葺で軒先に軽い銅板を廻らした純和風建物であるが、小屋組には強い海風に耐えられるよう工夫がみられ、梁を斜めに渡し、鉄筋の水平筋違いを十字に張っている。 「坐漁荘」の名には“なにもせず、のんびり坐って魚をとって過ごす”という意味がこめられていたが、実際には事あるごとに政治家の訪問を受けざるを得なかった。 現在、二階の座敷の障子を開け放つと、遠い山並みを背景に入鹿池が見渡せる。興津に建てられた当時は、右手に清水港から久能山が、左手に伊豆半島が遠望された。 昭和4年(1929)、海に面した座敷の横に洋間が、又、その奥には脱衣室を兼ねた化粧室や洋風便器の置かれた便所等が増築された。晩年になって別邸に洋間を設けたことは、若い時から西欧に遊学し、洋風生活に親しんでいたとは言え、洋間の居住性を評価する上で面白い。 博物館明治村 西園寺公望別邸「坐漁荘」 1920(大正9)年 登録有形文化財 設計 : 則松幸十 施工 : 不明 旧所在地 : 静岡県清水市興津町 犬山市内山3-27博物館明治村内 撮影 : 2011.9.22
by gipsypapa
| 2012-10-07 08:40
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