露伴は幼少の頃算術を得意とし、長じて電信を学び、電信技手を勤めるが、傍ら漢籍や仏書を読破し、「小説神髄」に触発されて明治20年(1887)21才の時、官を辞した。その翌年発表した処女作「禅天魔」が尾崎紅葉の目にとまると、文筆の世界に足を踏み入れ、「風流仏」「対髑髏」「五重塔」等次々に発表、紅葉とともに紅露時代として一世を風靡した。 露伴は自分の家を「かたつむりの家(蝸牛庵)」と呼び、やどかりのように幾度となく住まいを変えている。隅田川の東にあったこの家もその内の一つで、明治30年(1897)からの約10年間を過ごしている。周辺には江戸時代から豪商の寮(別邸)や下屋敷が多く、この建物もその雰囲気を伝えるとともに、深い土庇のある座敷には水鳥を形どった釘隠しが付けられ、墨東の名残もとどめている。 町屋と異なり、まわりの広い庭に自由に延び拡がった建物で、廊下を軸に玄関、和室、付書院のある座敷が千鳥に配されている。 博物館明治村 幸田露伴住宅「蝸牛庵」 1868(明治初)年 登録有形文化財 設計・施工 : 不明 旧所在地 : 東京都墨田区東向島 犬山市内山3-26博物館明治村内 撮影 : 2011.9.22
by gipsypapa
| 2012-10-03 13:46
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