諸戸氏庭園

諸戸氏庭園
旧諸戸清六邸(西諸戸邸)
名勝桑名市太一丸18
撮影 : 2010.11.23
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 諸戸氏庭園は、明治期に山林王と呼ばれた諸戸家の邸宅庭園で、江戸時代の庭園をもとにしながら豪商初代諸戸清六氏(1846~1906)が御殿と庭園を拡張整備し、店と住居として使用されていた遺構。庭園が国の名勝に、本邸、御殿など6棟が重要文化財に、3棟が県指定文化財、1棟が市指定文化財に指定されています。

 なお敷地の一角には六華園というJ.コンドル設計の洋館があり(次に紹介します)屋敷の位置から、こちらの初代清六邸を西諸戸、二代清六邸の六華園を東諸戸といいます。





旧諸戸清六邸本邸
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 現在受付になっている本邸。黒漆喰塗り土蔵造り2階建での重厚な外観の建物で、店と住居に使われました。後に建て増しされた仏間、茶室、洋間が付属しています。こちらも国の重要文化財の土蔵造り2階建て。

旧諸戸清六邸本邸
1889(明治22)年
重要文化財
設計・施工 : 不明

旧諸戸精太郎邸洋室
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 本邸東側には大正初期に増築された洋室があります。松坂屋本店や鶴舞公園噴水塔などを手掛けた鈴木禎次教授の設計で、実施設計は教え子で名古屋高等工業学校(現名工大)の第1回卒業生の星野則保といわれています。

本邸から張り出した形で増築され、木造ながらテラスはイオニア風の柱で支えられ、側面には縦長アーチの窓が並ぶ欧風の意匠です。あまり補修された形跡がなく、傷みが激しいようで、内部は非公開なのが残念です。国の重要文化財の木造平屋建て。

なお、敷地内には 御殿に併設した洋館と当時の社交場だった玉突場という、国の重要文化財に指定された2棟の洋風建築があるのですが、私が訪ねた時はエリアへ入ることができなかったのが残念です。解体されていないことを望みます。

旧諸戸精太郎邸洋室
1916(大正5)年
重要文化財
設計 : 鈴木禎次+星野則保
施工 : 不明
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 国の名勝になっている庭園には他にも古い建造物が残っています。

煉瓦蔵
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 元々ここには本邸と同じ時期に建てられた木造の米蔵が5棟ありましたが、明治28年に放火により消失。その後すぐ煉瓦により再建されました。船で運ばれた各地の小作米が蔵の前の堀から搬入されました。戦災で西側2棟が失われ、現在3棟が残っています。煉瓦の表面に小口面の段と長手面の段とが交互に出るイギリス積み。三重県指定文化財の煉瓦造り2階建て。

煉瓦蔵
1895(明治28)年
三重県指定文化財
設計・施工 : 不明
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山車庫
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 石取祭りの山車を収納する車庫。建築年代は不明ですが、山車の太鼓には明治30年の銘があるそうです。諸戸家は自費で石取祭車を建造し、太一丸の町内に貸し与えていました。土蔵造り、平屋建て。

山車庫
築年 : 不明
設計・施工 : 不明
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御殿と池庭
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 御殿といわれる純和風の建物。床が高く、柱が少ないので広間から庭の眺望がすばらしい。大隈重信や山県有朋など著名な政治家もここで宿泊しています。国の重要文化財の木造平屋建て。

前庭は国の名勝池庭。 宮内省技師の小平義近の設計で琵琶湖をイメージし、芝生の築山と大きな庭石、サルスベリ、紅葉などで植栽された和洋折衷の明治を象徴する庭園です。

御殿
1890(明治23)年
重要文化財
設計・施工 : 鬼頭与吉(棟梁)+伊藤末次郎(副棟梁)
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伴松軒
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 伴松軒は4畳半に1間床を加えた茶室です。尾張藩の茶頭をつとめた松尾流の10世松尾宗吾の好みとされています。江戸中期の山田氏時代からの橋杭灯籠が移設されています。

伴松軒
築年 : 昭和初期
重要文化財
設計・施工 : 不明
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菖蒲池
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 菖蒲池は江戸中期に桑名藩御用達商人として全国的にも知られた豪商、山田彦左衛門のころに整備されたもの。鎌倉時代に創建された当時からの遺構が一部残っていると考えられているそうです。

推敲亭
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 推敲亭は覚々斎原叟の作と伝わる草庵です。三重県指定文化財の木造平屋建て。

推敲亭
築年 : 江戸中期
三重県指定文化財
設計・施工 : 覚々斎原叟
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大門
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 御殿の建築と同時期に造られた薬医門形式(門の中心がやや前方に片寄り、中心の柱が太く、内側の柱が細い4脚門)の表門。入ったところには広大な馬車廻しがあります。

大門
1894(明治27)年ころ
重要文化財
設計・施工 : 不明

煉瓦塀
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 こちらは通用門とうだつの煉瓦塀。
by gipsypapa | 2011-07-20 17:06 | 建築
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