箕面の今戸家住宅

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 しばらく鎌倉から東京と関東地方が続いたので、大阪に戻ります。

 国の登録有形文化財が箕面市の桜ヶ丘にまとまって4棟あることを知って行ってきました。阪急電車箕面線の桜井駅を降りて真っ直ぐに北か、次の牧落駅から西へ進むと、箕面川の近くにあります。文化財の情報だけしか持たずに行きましたが、ここ桜ケ丘は住宅の宝庫でした。大正時代に生活改善を目指した「住宅改造博覧会」が開催された跡地だったのです。

 博覧会は1922(大正11)年に開催され、25棟のモダン洋風住宅が出品されました。作品は半同心円状に弧を描く2本の道路に沿って建てられ、博覧会終了後に各住宅は一般に分譲され、85年以上の長い歳月を経た今も数戸の住宅が残っています。c0112559_10262672.jpg文化財が一か所にかたまってあるのは、これが理由です。行ってみると文化財指定以外にも、当時の素晴らしい住宅がありました。徐々に紹介していきます。

 詳しい解説は「桜ヶ丘住宅改造博覧会の現在」というホームページにあります。少しデータが古いこともあり、これ以降に解体された住宅がありますが、貴重な資料です。

 この今戸家住宅は、実はこの「住宅改造博覧会」の出品ではなく、終了後翌年に会場跡地に建てられたものですが、箕面市教育委員会の住宅博の解説看板がこの建物の生垣に立っていたので最初に紹介します。

 和洋折衷のスパニッシュ風の外観の建物。赤というよりオレンジ色の瓦(和瓦)の屋根が急勾配に配置されているのは、あめりか屋の洋館によくみられるデザイン。屋根の形状が特徴的で、切妻屋根の頂部を少しカットしたり、窓の格子を不均等に小割したりして細かな細工が見られます。大正レトロにしてはモダンでお洒落な住宅です。国の登録有形文化財と箕面市都市景観形成建築物に指定された、木造2階建て。

今戸家住宅
1923(大正12)年
登録有形文化財
箕面市都市景観形成建築物
設計 : 奥戸大蔵
施工 : あめりか屋大阪
大阪府箕面市桜ヶ丘2-7-26
撮影 : 2008.12.29
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 通りに面した庭に立っている「住宅改造博覧会」の解説看板。
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切妻屋根の尖頭部分を切り落としています。
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 背面は普通の2階建てですが、正面玄関側は2階から急勾配の屋根が1階まで張り出した独特の形状。
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 あめりか屋の施工による、いわゆる「あめりか屋式」の建物で周りの出品作品とも調和し、ひときわこの一角のランドマーク的な景観をなしています。

 設計者の奥戸大蔵には、ほかの作品情報は見つかりません。東京帝国大学工学部建築学科卒業者リストによると奥戸大蔵は大正14年卒。つまり、この建物は在学中の設計作品だったと思われます。建築家の場合は卒業後に建築会社や事務所に就職した場合には、会社名に埋もれて名前が残らないので、その後も作品はあるかもしれません。そういう意味では建築家・芸術家の才能ももちろん、独立する企業家としての資質も必要だったのでしょう。
by gipsypapa | 2009-02-01 10:42 | 建築 | Trackback(1) | Comments(12)
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Tracked from m's dairy at 2009-02-26 22:22
タイトル : 桜ヶ丘の洋館
高橋家住宅見学後、桜ヶ丘へやって来た。 実家近くなのにまだじっくり足を踏み入れたことがなかった桜ヶ丘の洋館群を見て回ることに。 桜ヶ丘地区は大正11年に開催された「住宅改造博覧会」会場を中心に郊外住宅地として発展し、現在でも優良な住宅地としてその歴史的な景観を残している。 中央線沿いに唯一残る出展住宅、日本建築協会出品住宅第六号 木造二階建てのコッテージ式。大正11年築 登録有形文化財、箕面市都市景観形成建築物。 屋根は東西を除く三面に切妻破風を見せた形となっていて屋根は赤色のスレート瓦、玄関...... more
Commented by sy-f_ha-ys at 2009-02-01 19:48
いかにも大正時代の文化住宅といった趣ですね。
ウチの近所にも昭和初期の築になりますが、こんな感じの洋館が残っています。
いつも電車から眺めるだけで、実際に訪れたことはないんですけど(笑)
Commented by ゼク at 2009-02-01 20:22 x
こういうのが残っていることを全く知りませんでした。
ひょっとして昔習ったかもしれませんが、すごく興味があります!
こうやってみると建築と言うのは実際に住む人がしっかり管理すれば
80年経っても十分に使えるということですね!
Commented by ひろ009 at 2009-02-01 22:36 x
こんばんは。
アップを待っておりましたよ!ありがとうございます。
写真を拝見して桜ヶ丘の住宅の記憶が蘇ってきました。私も古いデジカメで撮った写真のデータがどこかにあるはずなのですが、見つからなくて(汗)。
川西の住宅と実によく似ていますね。
Commented by びんみん at 2009-02-01 23:20 x
gipsypapaさん、はじめまして。
びんみんと申します。今までも見せていただいていました。
これだけの、当時のモデル住宅がまとまって残っているというのは素晴らしいことですね。
いろんな角度から紹介されていて、よく分かります。

建築的な説明はないのですが、ブログに書いています。
URLに入れました。
Commented by gipsypapa at 2009-02-01 23:40
sy-f_ha-ys さん、
大正時代の心意気を感じますね。
同時期に東京の上野でも住宅展があったようです。
上野はさすがに残っていないのかな。
Commented by gipsypapa at 2009-02-01 23:44
ゼク さん、
私も比較的最近になって知りました。
いつでも行けるので、さぼっていましたが、ようやく年末の連休にでかけました。
この一角は集中して見どころがありますので、一度どうぞ。
ついでに立ち寄った阪急電車の宝塚線と箕面線を順次アップします。
Commented by gipsypapa at 2009-02-01 23:58
ひろさん、
あめりか屋設計で典型的なのは名古屋の旧川上貞奴邸かな。
http://gipsypapa.exblog.jp/6417046/
ひろさんの火打の洋館ー2とも、この建物とも共通点がありますね。
写真のデータが行方不明?なんと!(笑)
数年前に外付けハードディスクが突然壊れて難儀しました。
関係ないでしょうが・・・
Commented by gipsypapa at 2009-02-02 00:01
びんみんさん、
ああ、このブログには行ったことがあります。
近代建築の検索をしてたら、何度かヒットしました。
それにしても、一挙に種明かしみたいに紹介されましたねぇ。(^^)
今後ともよろしくお願いします。
Commented by びんみん at 2009-02-02 00:49 x
gipsypapaさん、こんばんは。
近代建築の検索をすると、決まってヒットする人がいますね。
私も「レトロな建物を訪ねて」にヒットすることはたびたびあります。
こちらこそよろしくお願いします。
一挙公開はその記事を書いたときにあまり時間がなかったのだと思います。
ほかに紹介された記事の後を受けてだったのと。
Commented by j-garden-hirasato at 2009-02-02 06:12
当時、
そんなことをしていたんですね。
それでも、
今も当時の建物が残されているのは、
凄いことです。
住んでいる人の意識の高さにも敬服します。
Commented by gipsypapa at 2009-02-02 10:42
びんみんさん、
確かに同じサイトやブログに何度も当たりますね。
だんだん趣味の仲間の輪を広げたいです。
よろしくお願いします。
Commented by gipsypapa at 2009-02-02 10:50
j-garden-hirasato さん、
大正時代の意気込みを感じる博覧会です。
日本を近代化するという社会全体の動きを反映しているのかな。
この住宅も雨どいなど、一部手を加えてありますが、
非常に良い状態で使い続けられているようです。
嬉しいですね。
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